2006年04月22日

順境と逆境(「言志四録」より)

言志四録(二)

以前より言志四録を月に20条ずつ勉強していますが、四録のうち2冊目の「言志後録」から1つ紹介したいと思います。

言志後録 第86条

順境は春の如し。出遊(しゅつゆう)して花を観る。
逆境は冬の如し。堅く臥(ふ)して雪を観る。
春は固(も)と楽しむ可(べ)し。
冬も亦(また)悪しからず。
(佐藤一斎 著/川上正光 全訳注 講談社学術文庫より抜粋)

誰でも、万事調子のいいときもあれば、うまくいかないときもあると思います。
そういった逆境について、「それを乗り越えればいい経験になるからがんばれ」といった言葉だと、正論かもしれませんがあまり心に響かないように感じます。

それを、春や冬に例えて「春(順境)はもちろんいいけど、冬(逆境)もときには悪くないだろ?」とは、なんとも粋な言葉ですね。

もっとも、人一倍暑がりな私にとっては、春のほうが憂鬱だったりしますが^^;

2005年05月22日

天道至教(「言志四録」より)

言志四録(一)

以前から言志四録を月に20条のペースで読み進めているのですが、今回特に印象に残ったのがこちらです。

言志録 第171条

吾れ俯仰して之を観察すれば、
日月は昭然として明を掲げ、
星辰は燦然として文を列し、
春風は和燠にして化を宣べ、
雨露は膏沢して物に洽く、
霜雪は気凛然として粛に、
雷霆は威嚇然として震い、
山岳は安静にして遷らず、
河海は弘量にして能く納れ、
谿壑は深くして測る可からず。
原野は広くして隠す所無く、
而も元気は生生して息まず。
其の間に斡旋す。
凡そ此れ皆天地の一大政事にして、
謂わゆる天道の至教なり。
風雨霜露も教に非ざる無き者、
人君最も宜しく此れを体すべし。
(佐藤一斎 著/川上正光 全訳注 講談社学術文庫より抜粋)

星、風雨、雷、山河など自然に対する表現がとても豊かで、眼前に風景がよみがえるようです。
これら全てが天地の至大な教えであるとする佐藤一斎の大局観、まだまだ遠いです…

訳文より原文のほうが趣があると思うので、訳文は載せませんが、フリガナは付けておきます。

吾(わ)れ俯仰(ふぎょう)して之(これ)を観察すれば、
日月(じつげつ)は昭然(しょうぜん)として明(めい)を掲げ、
星辰(せいしん)は燦然(さんぜん)として文(ぶん)を列し、
春風(しゅんぷう)は和燠(わいく)にして化(か)を宣(の)べ、
雨露(うろ)は膏沢(こうたく)して物に洽(あまね)く、
霜雪(そうせつ)は気(き)凛然(りんぜん)として粛(しゅく)に、
雷霆(らいてい)は威嚇然(いかくぜん)として震(ふる)い、
山岳は安静にして遷(うつ)らず、
河海(かかい)は弘量(こうりょう)にして能(よ)く納(い)れ、
谿壑(けいかく)は深くして測る可(べ)からず。
原野は広くして隠す所無く、
而(しか)も元気は生生して息(や)まず。
其の間に斡旋す。
凡(およ)そ此れ皆天地の一大政事(いちだいせいじ)にして、
謂わゆる天道(てんどう)の至教(しきょう)なり。
風雨霜露(ふううそうろ)も教(おしえ)に非(あら)ざる無き者、
人君(じんくん)最も宜しく此れを体(たい)すべし。


2004年12月12日

楽と礼(「言志四録」より)

言志四録(一)

言志四録というのは、江戸時代の儒学者である佐藤一斎の記した「言志録」「言志後録」「言志晩録」「言志耋録」を総称したものであり、修養処世の心得が1,133条にわたって書かれています。

佐藤一斎に学んだ佐久間象山の門下から勝海舟、坂本竜馬、吉田松陰などの人物が輩出されており、また西郷南洲(隆盛)も言志四録を愛読したといいます。

今年の夏から、居合の道場で言志四録を使った勉強会を行っていて、月に一度のペースで20条ずつ読み進めています。

今回の20条の中で、「楽」と「礼」について書かれたものがいくつかあり、それが印象に残ったのでここで書いてみます。

言志録 第72条

人をして懽欣鼓舞して外に暢発せしむる者は楽なり。人をして静粛収斂して内に固守せしむる者は礼なり。人をして懽欣鼓舞の意を静粛収斂の中に寓せしむる者は、礼楽合一の妙なり。


[訳文]
人を喜ばせ、おどらせ、元気を外にのびのびさせるものは音楽である。人をして、身を整え、心を粛ましめ、内に引きしめさせるものは礼である。これら相反する二面を調和させ、人をしてよろこびの中に心の引きしまるものあらしめるのは、礼楽合一の妙である。
(佐藤一斎 著/川上正光 全訳注 講談社学術文庫より抜粋)

居合のような武道もまた、礼楽合一の妙があると思います。
体を動かし、また上達していく喜びはまさにここで言うところの「楽」であり、礼に始まり礼に終わる武道はそのまま「礼」につながります。
訳文では「音楽」となっていますが、音楽に限らず人心を発揚せしむるものが「楽」だと捉えています。

言志録 第78条

一気息、一笑話も、皆楽なり。一挙手、一投足も、皆礼なり。


[訳文]
一呼吸も、自然の音楽であり、談笑も人心を和らげる音楽である。手を一つあげるのも、足を一つ動かすも、皆礼である。


[補足]
日常の行動のなかに、楽も礼も存在するものだ。したがって、日常の行動は楽や礼の精神にはずれないようにあらねばならない。
(佐藤一斎 著/川上正光 全訳注 講談社学術文庫より抜粋)

居合を始めてから特に立ち居振舞いには気を使うようにしていますが、「礼」だけでなく「楽」も兼ね備えた言動が行えるよう、修養を積みたいと思います。

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